実質的一人会社の役員給与損金算入規制           

日本の中小同族会社のほとんどが対象になります。(平成18年4月1日以後開始事業年度について適用)

それは、平成18年会社法施行後は、法人化が簡単になるので、「実質1人会社には給与所得控除額(サラリーマンの必要経費)と法人の必要経費(役員報酬として損金計上)の二重経費化を排除する」趣旨で与党多数で可決されました。

内容は、同族会社が支給する社長への給与のうち「給与所得控除相当額」を損金不算入(会社の経費にならない)とする法律です。ということはそれだけ所得が増加しますので、法人税を余分に払わなければなりません。

()給与所得控除額とは、サラリーマンの必要経費のことです。社長への給与の必要経費は収入に応じて、次のように法律で定められています。

年収 給与所得控除額 
180万円以下  年収×40%(最低65万円)
180万円超 360万円以下 72万円+(年収−180万円)×30%
360万円超 660万円以下 126万円+(年収−360万円)×20%
660万円超 1,000万円以下 186万円+(年収−660万円)×10%
1,000万円超

220万円+(年収−1,000万円)×5%

ただし、@その同族会社の所得と社長の役員報酬の合計額800万円以下の場合には適用しません。ということは、従来どおりの法人税となり、増税にはなりません。(そのほかの規定もあります。)

直近3年間の平均所得(課税所得+主宰者役員報酬)が800万円以下「規準所得金額」という

例題

同族会社の所得が100万円

社長さんの年報酬が800万円の場合

回答
合計
900万円法人税対象所得は従来100万円のみですが、800万円の給与所得控除額は上記に基づいて計算しますと、200万円となり、合計300万円として法人税が課税されます。税率が約30%の人ですと、60万円増税になります。


本制度における損金不算入とされる対象者は「業務主宰役員」に限定されており、一般的に「代表者又は業務を主宰しているもの」とは、申告書等に自署押印した者とされている。

そのほかの規定除外としてA規準所得金額が800万円を超え3,000万円以下で、かつ主宰者役員報酬が所得の1/2以下であること。
さらに、損金不算入とされる金額の算出方法について、期中で業務主宰役員の異動があった場合には、期末及び
期中業務主宰役員のそれぞれの当該給与にたいして算出された金額の合計額が損金不算入の対象となる。

一方、複数の特殊支配同族会社の業務主宰役員を兼任している場合は、複数の給与の合計額に対する全体の給与
所得控除額をそれぞれ按分して算出することになるから留意が必要である。




事例
3月決算法人であってとし、過去8年間で欠損金が生じた事業年度はなかった。
所得金額 業務主宰役員給与(損金算入分)
16年3月決算 300万円 480万円
17年3月決算 340万円 500万円
18年3月決算 520万円 650万円












事例の別表十四(一)付表

基準期間がある場合における前三年基準所得金額の計算
基準期間内事業年度等 所得金額又は欠損金額 欠損金等の控除額 業務主宰役員給与 調整所得金額 調整欠損金額 過年度欠損金額
15.4.1
16.3.31
@ 3,000,000円 0
4,800,000
0 7,800,000 0
16.4.1
17.3.31
A 3,400,000 0
5,000,000
0 8,400,000 0
当期直前事業年度 B 5,200,000 0
6,500,000
0 11,700,000 0
計@+A+B C
16,000,000
27,900,000 0

事例の別表十四(一)

基準期間がある場合の適用除外の判定 基準期間開始の日 15 15.4.1 基準期間がない場合の適用除外の判定
基準期間内事業年度等の月数 16 36
前三年基準所得金額の計算 調整所得金額又は調整欠損金額 17 27,900,000円
過年度欠損金額の調整控除額 18 0
差引計
(17)−(18)
19 27,900,000
(19)×12/(16) 20 9,300,000
前三年業務主宰役員平均給与 21 5,433,333
前三年基準所得金額に占める前三年業務主宰役員平均給与額の割合21/20 22 0.584

この基準所得金額が800万円超え3,000万円以下の場合には、基準所得金額に対する業務主宰役員
給与割合が50%以下であれば、業務主宰役員の給与所得控除額分損金不算入は適用がないが、この場合
には適用があり損金不算入になる。184万円損金付算入になる。

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