高齢者医療については、長らく老人保健法による老人医療制度として実施されてきた。老人医療制度については、国・都道府県・市町村の負担金及び健康保険等(政府管掌保険、共済組合、健康保険組合、国民健康保険等)の拠出金により運営されてきたが、高齢化の進展等により、その財政負担は増加の一途を辿ってきた。老人保健法では、被保険者の年齢や窓口負担等の引き上げ等を行うなど制度改正を行ってきたが、なおも増え続ける高齢者医療費の財政負担を抑制するために設けられたのが、後期高齢者医療制度である。
老人保健法による老人医療制度が他の健康保険等の被保険者資格を有したまま老人医療の適用を受けていたのに対し、後期高齢者医療は独立した医療保険制度である点が大きく異なる(従来は被保険者証が2枚あったが、1枚になる)。被保険者資格や窓口負担については、従来の老人医療制度を踏襲している。
都道府県を単位とする広域連合(後期高齢者医療広域連合)が保険者となる。いわゆる「委譲事務」ではないため、政令指定都市も独立した運営ではなく、その市がある都道府県の広域連合に参加する。
広域連合の区域内に住所を有する75歳以上の高齢者と65歳以上で広域連合から障害認定を受けた者。
75歳到達の資格取得は誕生日当日である。年齢計算ニ関スル法律(明治三十五年法律第五十号)は適用されない。したがって1日生まれの人は当月から保険料が課されることになる。閏年2月29日生まれの人は3月1日が資格取得日となる。
障害認定での資格取得日は、保険者である広域連合が障害認定した日となる。
保険者である広域連合の区域外にある住所地特例対象の施設に住所を移した場合に引き続き従前の保険者の被保険者となる仕組み。
住所地特例の判断は保険者単位となるため、同一都道府県内の他の市区町村の住所地特例の対象施設等に住所を移しても住所地特例とならない。
各広域連合単位で保険料が決定される。ただし、広域連合内の構成市町村で高齢者にかかる医療費に大きな開きがある場合などは構成市町村単位で不均一な保険料を設定することもできる。
保険料は被保険者個人単位で課されることになり、保険料は応能負担である所得割と、応益負担である均等割からなる。この点は市町村国民健康保険と似ている。
保険料の徴収方法は特別徴収(年金からの天引き)を基本とし、特別徴収ができない者は普通徴収となる。この点は介護保険制度における保険料の仕組みを踏襲している。
特別徴収は介護保険の特別徴収対象者であることが必要である。
また、この医療制度を支えるため、若い世代も後期高齢者の医療費を負担することになり、負担分(支援金分)が国民健康保険料にかせられるため、実質的には全国民の保険料値上げとなる。
従前の老人医療では家族等の被用者保険の被扶養者であった場合に追加的な保険料負担がなかったが、後期高齢者医療では、被保険者ごとに保険料が課せられることになるため、その世帯では新たな負担増となる。このような急激な負担増を緩和するための措置がとられている。
また、被用者保険の被保険者が後期高齢者医療制度に移行するために、その扶養者も被用者保険の扶養者でなくなるため市町村の運営する国民健康保険に加入することとなる。この際にも世帯での急激な負担増を緩和するための国民健康保険側での緩和措置が設けられる予定である。
後期高齢者医療制度